正月早々暴力団にレンガで襲撃された鶴田浩二
警察の捜査に鶴田は協力的ではなかった。「恨まれる覚えはなく、犯人の見当もつかない」の一点張り。事件にしてほしくないといった様子がありありだった。そして50日後には後に山口組幹部となる組員らの逮捕、自首となった。
事の発端は前年暮れ、鶴田のマネジャーで水の江の事実上の夫が田岡一雄山口組3代目組長を訪ねたところから始まる。正月にショーをやるのでよろしくと、浅草海苔1缶と5万円の入った金包みを渡した。だが、田岡組長はそのカネを突き返す。自伝ではその時の心境を「一瞬、金包みにいたく自尊心を傷つけられた。挨拶ならば海苔だけで十分」と語っている。
「そんな額じゃ、少なすぎるというのが本当のところでしょう。でも、襲撃に至った理由は別にある」(元芸能記者)
52年4月、田岡組長は歌手などを集めてプロダクションを立ち上げた。鶴田にも参加を求めたが、拒否されて怒っていたのだ。
だが、そこには伏線があった。その前年から鶴田は実父から度々カネの無心をされ、トラブルが起こっていた。仲介を田岡組長に頼み、いったんは解決。組長にすれば、そうした恩がありながら、なぜオレの言うことを聞けないのかという思いだった。