老いを苦にして7階から飛び降りた 大友柳太朗
当日の朝8時半、大友はマンションの管理人に「地下のトランクルームを開けてほしい」と頼む。管理人は鍵を開けたが、大友は手にベルトを持っていて様子がおかしい。しかも、中から鍵をかけてしまった。これは自殺かと管理人は大友の妻を呼び、合鍵を使って開けたが、室内にベルトを掛ける場所はなく、呆然と立ちつくす姿があった。
妻はいったん自室に連れ帰り、近所に住む長男に「様子がおかしい。家に来て」と電話をかけた。その電話に向かった短時間に部屋から姿を消した。一瞬の隙をついた自殺決行だった。
その1年ほど前から周囲に「老いてセリフ覚えが悪くなった」とよくこぼしていたという。不眠にも悩み、家族に口癖のように「死にたい」と漏らしていた。自殺の前日、伊丹十三監督の「タンポポ」の「ラーメンの先生」役での撮影を終え、監督に「アフレコはないでしょうか」とわざわざ確認している。それを人生の一区切りと考えたのか。
もともと、生真面目な性格で知られ、便所でも台本を読むといわれた完全主義者の仕事人間。無趣味で、気晴らしをする機会もなく自分を追い詰めていったのだった。