末期がん患者は「在宅医療」の方が幸せという現実 年間200人超を看取る名医が語る
2020年の日本の総死亡者数は137万2755人。うち37万8385人はがん死だ。その多くは病院で亡くなる。しかし、その中には自宅で最期を迎えることを希望している人もいるはずだ。自宅でのがん死はどうなのか? 年間200人超の看取りを行う「しろひげ在宅診療所」(東京・江戸川区)の山中光茂院長に聞いた。
「条件にもよりますが、末期がんの患者さんとその家族にとっては病院で最期まで治療を受けるより、通院がつらくなったら在宅診療を受けた方が幸せだと思います」
最大の理由は、世話をしている家族に余裕が生まれ、患者さんを愛情を持って看取れるようになるからだ。
「病院の多くは急性期病院でその使命は病気を治すことです。そのため、末期がんの患者さんで治すことが難しいとわかっていても、医師は強い薬を使ってでも治そうとします。しかし、それは必ずしも患者や家族のためになるわけではありません。ときにがんの痛みはがんそのものでなく治療によって生じるからです。しかし医師は病状を知るための腫瘍マーカーや腫瘍の大きさに集中するあまり、患者の苦しみや世話をする家族の手間暇や生活状況に無頓着な場合も少なくないのです」