末期がん患者は「在宅医療」の方が幸せという現実 年間200人超を看取る名医が語る
60代の大腸がん末期の男性の患者さんは全身にがんが転移していた。
抗がん剤治療のために通院していたが、つらくなり在宅診療に切り替えた。すると患者、家族双方に相手を思いやる心の余裕が生まれ、笑顔が見られるようになったという。
「通院のときは決まった時間に病院に着けるよう必死で食事をさせたり服を着替えさせたり、介護タクシーを呼び、車椅子に載せて通院させることが家族の方には大変な苦労です。それが在宅になれば、通院のための準備もいらず、治療のために待つ必要もない。末期がんの治療ということで医療費でヘルパーさんや訪問看護の人たちの手を借りられるようになり、体力的にも精神的にも金銭的にもずいぶん楽になったと家族の方は喜んでおられました。患者本人も食事量などで薬の量を変えたりすることで通院時より痛みがラクに取れるようになったようです」
患者からすると、麻薬やステロイドを使う、というとそれだけで自分の人生を諦めさせられているように感じる。
しかし、在宅診療で苦痛の状態をきめ細かく確認し、それらの薬をうまく利用すれば緩和はもちろん、延命にもつながり人生を有意義に過ごせる。