著者のコラム一覧
青島周一勤務薬剤師/「薬剤師のジャーナルクラブ」共同主宰

2004年城西大学薬学部卒。保険薬局勤務を経て12年9月より中野病院(栃木県栃木市)に勤務。“薬剤師によるEBM(科学的エビデンスに基づく医療)スタイル診療支援”の確立を目指し、その実践記録を自身のブログ「薬剤師の地域医療日誌」などに書き留めている。

熱帯夜は6月半ばの「初夏」が要注意! 死亡リスクが9%上昇する

公開日: 更新日:

 地球の温暖化によって、平均気温は世界的に上昇していることが知られています。気温の上昇は健康状態にもさまざまな影響を与え、死亡リスクの増加を引き起こす可能性も報告されていました。一方、これまでに報告された研究の多くは、最高気温や平均気温を用いた日中の暑さに関する調査であり、気温が低くなる夜間の暑さに関する調査は限られていました。

 夜間の気温が下がらない熱帯夜では、体内に熱がこもった状態が続き、健康状態に悪影響を及ぼす可能性があります。そんな中、熱帯夜と死亡リスクの関連性を検討した研究論文が、環境健康科学に関する専門誌の2023年5月号に掲載されました。

 この研究では、日本の47都道府県を対象に、1973年から2015年まで43年間の気象状況が調査されました。熱帯夜は、夕方から翌日の朝までの最低気温が25度以上の日と定義され、4~11月における熱帯夜の発生と死亡リスクの関係が解析されています。なお、研究結果に影響を与え得る平均気温、季節性、曜日、経時的な死亡率の変化を考慮して解析されました。

 その結果、熱帯夜ではない日と比べると、熱帯夜が発生した日では、死亡リスクが9%、統計学的にも有意に上昇することが示されました。心臓病脳卒中肺炎腎臓病、喘息など、死亡原因を11種類に分けて解析しても、すべての原因において死亡リスクの上昇が認められました。また、熱帯夜による死亡リスクの増加は都道府県ごとで異なるものの、晩夏(8月の半ば)と比べて初夏(6月の半ば)で高い傾向にありました。

 論文著者らは、「日中の気温上昇に加え、熱帯夜も健康状態に強い影響を及ぼし、一日の最低気温に着目した注意喚起も重要である」と結論しています。

■関連キーワード

日刊ゲンダイDIGITALを読もう!

  • アクセスランキング

  • 週間

  1. 1

    安青錦の大関昇進めぐり「賛成」「反対」真っ二つ…苦手の横綱・大の里に善戦したと思いきや

  2. 2

    横綱・大の里まさかの千秋楽負傷休場に角界から非難の嵐…八角理事長は「遺憾」、舞の海氏も「私なら出場」

  3. 3

    2026年大学入試はどうなる? 注目は公立の長野大と福井県立大、私立は立教大学環境学部

  4. 4

    東山紀之「芸能界復帰」へカウントダウン着々…近影ショットを布石に、スマイル社社長業務の終了発表か

  5. 5

    「総理に失礼だ!」と小池都知事が大炎上…高市首相“45度お辞儀”に“5度の会釈”で対応したワケ

  1. 6

    大関取り安青錦の出世街道に立ちはだかる「体重のカベ」…幕内の平均体重より-10kg

  2. 7

    日中対立激化招いた高市外交に漂う“食傷ムード”…海外の有力メディアから懸念や皮肉が続々と

  3. 8

    義ノ富士が速攻相撲で横綱・大の里から金星! 学生相撲時代のライバルに送った痛烈メッセージ

  4. 9

    同じマンションで生活を…海老蔵&米倉涼子に復縁の可能性

  5. 10

    独立に成功した「新しい地図」3人を待つ課題…“事務所を出ない”理由を明かした木村拓哉の選択