糖尿病患者の3割が罹患する「慢性便秘」は命にかかわる病気…死亡リスク20%増との報告も
「便秘は、尿が出なくなり腎不全になって人工透析が必要になる、慢性腎臓病(CKD)の進行とのかかわりがあることもわかっています。米国退役軍人350万人を対象に便秘の有無と以降のCKDの発症について研究したところ、CKDの累積発生率は、便秘のある人はない人に比べて1.13倍だったとの報告もあります。便秘のコントロールがCKDの病状を抑えることに関係しているのです」
そんな恐ろしい便秘は、これまで筋肉量が少なく食の細い高齢者や、それらに加えて排卵後から生理前にかけて増える黄体ホルモンが腸の働きや水分量の調節にかかわっていることから、女性に多いと考えられてきた。
■食生活と運動を見直して防ぐ
しかし、実は糖尿病の人も便秘になりやすいことがわかっている。なぜか?
「糖尿病の3大合併症のひとつである神経障害が関係すると考えられていて、糖尿病の3割近くが便秘だといわれています。糖尿病で高血糖状態が続くと、全身の神経が障害され、運動・感覚・自律神経が障害されます。自律神経は胃や腸といった消化管の機能や運動をつかさどっていて、これが障害されると胃や小腸、大腸の消化吸収に異常が起きます。そのことで食べ物の移動のスピードが遅くなり、小腸の悪玉菌が異常増殖し、小腸の老化やがんといった病気を招きます。さらに、運動神経や感覚神経障害により、肛門や直腸の収縮・知覚の機能が低下して便が腸内にたまり、硬くなり、便意が低下することなどで便秘になってしまうのです」