豊田章男会長も欲しくなる?「小さな高級車」新型レクサス LBX…まずは会長試験をパス!
レクサス LBX(車両価格:¥4,600,000/税込み~)
「普段ビジネススタイルで過ごしている豊田会長が、ふとスーツを脱いでTシャツとスニーカーになる。『そういう時に気負いなく乗れるクルマが欲しいんだよな』って一言が(LBXを作る)きっかけなんです」(チーフエンジニア遠藤邦彦さん)
話題の小さな高級車、レクサス LBXの国内試乗会が行われた。LBXは「レクサスブレイクスルークロスオーバー」の略。車名の「破壊的突破」の意味合いに作り手の気合が伺える。事実、ここ何十年と「小さな高級車」で成功したブランドはない。高級と言ってもいいが小型スポーティプレミアムとしては唯一、2000年代にBMWミニが成功したくらい。
かつてトヨタが作った小さな高級車プログレやオリジンも一世代で消え去った。初代クラウンをモチーフにしたオリジンなどは元々限定だが、約1000台しか作られなかった。
しかし、そこにも学びはある。かつての高級車は文字通り「高級車を小さくしたもの」。プログレもオリジンも基本は当時のクラウンやセルシオの小型版。ボディーはほぼ5ナンバーサイズ(オリジンはちとデカ目)で贅沢な直列6気筒エンジンを搭載し、内装はセルシオ品質で、先進安全もガンガンに盛り込まれていた。
だがそれではダメで、高級化するとはいえ、小型車には小型車なりの価値を持たせないといけない。そこで生まれたのがLBXであり、まさしく冒頭のプレミアムスニーカーをイメージしている。
ベースはヤリスクロスだがサイズは全然違う
実車を見てまず驚くのは、かつてないグラマラス感。一応ベースはコンパクトSUVのヤリスクロスだが、サイズが全然違う。
4190mmの全長はほぼ同じだが、1825mmの全幅は約6cm長いし、1545mmの全高も5cm弱低い。なにより前後フェンダー感のマッチョさは欧米プレミアム以上で、それでいて日本の立体駐車場にも入るコンパクトさ。インパクトと扱いやすさのバランスが他のプレミアムと違う。
乗ってみた時の走り味も凄い。骨格はサスペンションのジオメトリーやシート座面高まで煮詰められ、タイヤ取り付け部にはアルミ製ナックルを初採用。乗り心地に効くホイールベースもヤリスクロスより2cm延長。
パワートレインは一見ヤリスクロスと同じ1.5ℓハイブリッドだが、ハイブリッドシステムが新しくなり、電池も大電流対応のバイポーラ型ニッケル水素になり、システム出力は136psに拡大。
発進加速は電動感が増しており、しばらくEV走行が続き、ヤリスクロスで感じた直3エンジンの安っぽいバイブレーションやノイズがほぼ取り去られている。ライバルは静かなバッテリーEVか? と言いたくなるほどだ。
乗り心地もヤリスクロスにあったゴツゴツ感が取り去られ、まさしく小さな高級車。
とはいえ、意外なのは、予想していたフカフカな乗り心地やゆったりハンドリングではないこと。思った以上にキビキビ感があって、コンパクトカーならではの運動性も追い求めている。この当たりが「プレミアムスニーカー」にも相通ずるところで、高級革靴とは違うカジュアルさな楽しさだ。
今までにない上質感と気楽さが共存
インテリアも今回乗った「アドバンス」や「クール」グレードは大画面の12.3デジタルメーターやディスプレイはもちろん、本革シートや本革+スウェードのコンビシートが奢られ、確かに高級車然。
一方それでいて色合いはカジュアル。車両価格は現状460万円スタートと安くはないが、今までにない上質感と気楽さが共存している。ここがLBXの真骨頂なのだろう。
小さな高級車の本当の難しさは、“大は小を兼ねる”でも“小は大を兼ねない”ところ。単純に高級車の小型版とは違う、小さいなりの良さを追求しなくてはいけない。
その評価は発売後のマーケットを見るしかないが、前述チーフエンジニアによると「(豊田会長に乗って頂き)具体的にどうだとは言われないんですけどもメチャクチャいい笑顔を頂きました(笑)」
まずは会長のプレミアムスニーカーとしては合格点。あとはリッチなみなさんのおクチに合うかどうか、といったところか。