経団連の会長人事(下)本命は日鉄の橋本英二会長、対抗はNTTの澤田純会長としておく
悲願だったNTT完全民営化
澤田氏が財界活動に注力するもう一つの理由は、悲願としてきたNTTの完全民営化を実現させるためだ。政府が保有するNTT株式の売却案が浮上したのは、防衛予算の確保のためだった。
NTT法で、政府は株式の3分の1以上を保有すると定められている。
自民党防衛関係費の財源検討に関する特命委員会の委員長を務める萩生田光一政調会長(当時)は当初、防衛力強化の財源確保に向けてNTT株の売却の是非を検討すると主張していた。その後、NTT法がNTTが世界で競争する制約になっているとし、同法の廃止にまで議論が拡大。NTTの変革につながる可能性が出てきた。
2018年6月、NTT社長に就任した澤田氏はグループ再編を進めてきた。20年末に4兆円超という国内企業のTOB(株式公開買い付け)で過去最高額を投じ、上場子会社のNTTドコモを完全子会社にし、上場廃止とした。「澤田氏は、とにかくせっかち」との部下の評もある。NTTの歴代社長では異質のタイプだ。
NTTグループの再統合へのギアは入った。次のステップが財界総理の椅子というシナリオなのだろう。NTTの株価が安値圏を底這いしていることは不安材料である。
経団連の副会長はメーカーでも素材分野は橋本氏を含めて2人しかいない。組み立て産業はアジア勢に追い上げられて、かつての輝きを失いつつある。
経団連会長の座を射止めるのは誰か。実力プラス人気、世論や経団連独特の“評価”もある。十倉雅和会長が「ズバズバ、はっきり物を言う人物を嫌う」という話も流れている。そうなると……。