不易糊工業 鈴木勝也社長(1)赤いフタと黄色い入れ物の犬をモチーフにしたレトロな糊でお馴染み
「防腐剤としてホルマリンを使うことで、腐らない糊を作ってきました。しかし、1970年代に入って安全性や公害がクローズアップされ、ホルマリンの含有量も法律で基準が設けられました。弊社の製品は基準と比べてかなり少ない含有量だったのですが、子どもが手で塗るものですし、口に入れることもあるかもしれないということで、有害なものは使わない商品を目指すことになりました」
完成するまでに17年もの年月がかかったそうだ。
「でんぷん糊は、唾液に含まれる酵素ですぐに液状化、分解してしまうんです。ホルマリンにはそれを抑える効果もありました。その解決が難しかったと聞いています」
そんなでんぷん糊は少子化やペーパーレスの影響で生産がどんどん減っているそうだ。それでも鈴木勝也社長(43)は、不易糊工業はでんぷん糊を作り続けるべきだと考えている。
「やはり子どもたちに使ってほしいからです。使った記憶、思い出を大切にしてほしいのです」
鈴木社長は、でんぷん糊の容器を手に取って話を続ける。前述した、1975年に商品化された「どうぶつのり」の容器だ。