描き下ろし時代小説編
「長屋狂言」田牧大和著
芝居小屋森田座の大部屋女形の濱次は、久しく役をもらえず、暇を持て余していた。そんなある日、長屋の住人の五月らから相談事が持ち込まれる。同じ長屋に住む浪人の仁野が、亡き妻の妹で出戻りの絹に片思いされ困っているというのだ。仁野は息子の良太郎が幼いときに絹に世話になっているので、邪険にもできぬらしい。実家を飛び出した絹は、仁野との同居を断られ、真向かいの長屋に引っ越してきたという。五月らは、森田座の座付き戯作者・松馬に頼んで、絹が自ら身を引くよう筋書きを書いてもらえないかというのだ。話を聞いた師匠の仙雀が安請け合いしたため、濱次は長屋で一芝居打つことに。
「濱次お役者双六」シリーズ最新刊。(講談社 750円+税)