「美しき一日の終わり」有吉玉青著
その朝、美妙は、同居する娘一家が起きてくる前に身支度を整え家を出る。古希を迎えた美妙が杖を頼りにたどりついたのは、数年前まで暮らしていた家だ。荒廃した家は、娘の意向でアパートに建て替えるために取り壊しが決まっていた。間もなく、病院を抜け出してきた秋雨も姿を現す。美妙が15歳のとき、母親を失った腹違いの7歳下の弟を父が引き取った。美妙は戸惑ったが、母に冷たく扱われ、そんな母に気兼ねする父にも持て余されていた秋雨を見かね、次第に心を通い合わすようになる。その日は、55年前、2人が初めて会った日だった。
お互いを思いながら別々の人生を歩んできた2人の55年間を1日に凝縮した純愛小説。(講談社 870円+税)