描き下ろし時代小説編
「招き鳥同心詠月兼四郎」藤村与一郎著
兼四郎は、火盗改組頭の運八郎の下で招き鳥同心を務めている。招き鳥とは、浪人になりすまし、大店に用心棒として潜入、盗賊の片棒を担ぐ用心棒仲間に接近して、凶行寸前に一味を一網打尽にする「おとり」を意味する。
探索のため、木綿問屋の日野屋に用心棒として雇われた兼四郎だが、ある夜、侵入してきた4人組の賊に主夫婦と大番頭が惨殺されてしまう。固い戸締まりが内側から開けられており、何者かが手引きしたようだ。しかし、南町奉行所の探索はなぜかおざなりで賊を真剣に追っているように見えない。兼四郎は、運八郎の指示に背いて独自に事件について調べ始める。(「有り得ない罠」)
江戸流「おとり捜査官」の活躍を描く連作集。(宝島社 660円+税)