監督・主演のディーン・フジオカが語る「市橋達也」映画完成までの葛藤
07年3月26日。千葉県のマンションからひとりの男が捜査員の追跡を振り切って逃走した。男の名前は「市橋達也」。名前を変え、顔を変え、2年7カ月にわたって青森から沖縄まで日本全国を逃げ回った。ネット上では市橋を「イッチー」と呼ぶ信者やファンクラブまでもが出現。この映画は、逮捕後の11年に出版された市橋本人の手記がもとになっている。
手記による印税はすべて遺族への弁済に充てるとしたが、出版を知った遺族は「こうした本を書くことが許されるのか」と受け取りを拒否。物議を醸した手記ゆえに「映像化が難しい」と言われていた。そんな中、さまざまな制約を乗り越えて映画「I am ICHIHASHI 逮捕されるまで」が11月9日に公開される。主演だけでなく自らメガホンを取ったのはディーン・フジオカ(33)。活動拠点を台湾に置く新進の俳優だ。日本を震撼(しんかん)させた殺人犯を演じる戸惑いはなかったのか。
「周りから忠告がたくさんありました。リアルな話をすると、テレビコマーシャルに出られなくなるよとか。この映画によって失うものが大きすぎるんじゃないかとか、いろんな視点からの忠告を受け、リスクを理解したうえでやると決めました。市橋役をやる時点で批判されるだろうし、誤解される。だからこそちゃんと自分の言葉で伝えていかないといけない」