「春を背負って」木村大作監督
「あったねえ。まず背負ってというタイトル。人間誰しも家族とか、会社とか、いろんなものを背負って生きている。74歳にもなると、重くてしょうがないんだよ。でもな、それが人生なんだ、生きるということなんだ。一歩ずつ、負けないように、生きていく。原作の奥秩父を立山連峰に代えても構わないと笹本さんに言ってもらった時点で、これは絶対にいい映画になるって確信したね」
――豪雪に吹雪に氷点下20度の寒気と、とても過酷なロケをどうやって乗り切ったのですか。
「気だな。専門家は気力だけでは駄目だって言うけど、それしかない。しんどいけど、俺にとって映画は場所ありきなんだよ。今どきのCGとかでもやれるんだろうけど、自然の本物の強さ美しさを、熱を放出する本物の映像を撮るには行くしかないから行ったんだ。『八甲田山』からの脈打っている主義ってやつだな。黒沢明さんや大島渚さんは作家だと思うし、自分にはそこまでの力はないけれど、自分の思うものを撮りたいんだな。ゼロから出発する映画作りがやっぱり好きなんだよ。映画を通じて自分の思いを皆に伝えたいんだよ」