ドラマ界の“伝説”佐々木昭一郎氏 「新作で映画に革命起こす」
日本のテレビドラマ界で“世界の”とか“伝説の”などのカンムリがつくのはこの人しかいない。70年代、「紅い花」「四季・ユートピアノ」「川シリーズ」などの作品で国際エミー賞、モンテカルロ・テレビ祭賞などを総ナメにし、“グランプリ男”の異名を取った元NHKディレクターの佐々木昭一郎さん(78)だ。95年にNHKを退職した佐々木さん、今どうしているのか。
「最後に手がけたドラマが、95年、まだNHKにいた頃の『八月の叫び』だから、ブランクは長かったですね。ただ、頭の中には新作のシナリオがつねに泉のごとくコンコンと湧いていて、いつでも撮れる準備はできてた。それが6年前でしたか、偶然、今回の主役である韓国人留学生のミンヨンと出会ったことで一気に作品化につながりました」
神田神保町にある岩波ホールで会った佐々木さん、まずはこう言った。同ホールで10月11日から、佐々木さんがフリーになってから初めての映画「ミンヨン 倍音の法則」が公開されている。
「撮影はほぼ2カ月で終わりました。ところが、その段階じゃ従来のボクのドラマと変わらない。ミンヨンの初々しい魅力、『八月の叫び』にも出てた指揮者の武藤英明が奏でるモーツァルトの交響曲第41番の『ジュピター』と、2つある見どころに、さらにひとつを加えたい。そう思い悩むうちに時間が経っちゃいましてね。そんなある日、吹奏楽の全国コンクールで1位になった市立船橋高校の演奏を聴き、彼らが爆発させる若く力強い音に衝撃を受け、すぐに交渉し、3つ目の見どころ、いや、聴きどころになる了解を得ました」