小島慶子<下>「ホライズン」は40代半ばだからこそ書けた
「TBS社員時代はラジオの番組後記を書く程度だった」と振り返る小島慶子さんが、物書きを生業とする現在の姿をいちばん驚いているようだ。4月に上梓した2作目となる長編小説「ホライズン」(文藝春秋)は、夫の仕事に伴い南半球で暮らす4人の女性たちの孤独と共感を描いた。今だからこそ書ける作品だという。
◇ ◇ ◇
オーストラリアで私を産み育てた母は一体、何を考えていたのか――。今作の着想は自分が同じ土地で子育てをして初めて感じた素朴な疑問をもとに、女性ならではの幸せや人間関係のしんどさをつづりました。美しい親子愛、絵になる友情、ステキな夫婦……いずれも簡単に築ける関係ではありません。
それに40代半ばにもなると、身近な相手と過ごす時間が、人生の豊かさにつながるとは限らないことを痛感します。ただ、人とつながることにささいな喜びを感じないわけではない。そこはかとないつながりのまま友情が芽生えることもあれば、時間をおいて出会い直しが必要な場合もある。人間関係は実に難しいものですが、小説には、現実社会のネガティブな関係の中にもある希望を込めて書いたつもりです。