小島慶子<下>「ホライズン」は40代半ばだからこそ書けた

公開日: 更新日:

「オール読物」で連載していたときに、現地での取材はしていません。結末を決めていたわけでもなく、ストーリーは毎号、行き当たりばったり。毎月、物語の冒頭から読み返して続きを書いていました。小説の書き方としてはどうなのかしら(笑い)。ですが、生身の人間が生きていくのは、それこそ行き当たりばったり。日々の生活で交わる人々が、どんな生い立ちと経歴の持ち主かも、何を考えているのかも分からない。仲たがいするか、仲良くなるのかも知らないのに、とりあえず関係を続けているわけです。

 そんな関係をある時期に振り返ると、ひとつの物語になっている。人生は、小説を読むように過去を振り返ることはできるけれど、小説を書くように思い通りの筋書きを生きることはできない。そんな不確実な日々の中にあっても人間関係というのは成立している。だから、小説を書くときだって「この人、どうなるのかな」って思いながら、書くうちに物語ができていくのは自然なことだと思うのです。

 テレビやラジオに加え、文章を書く仕事もしていて思うのは、与えられるチャンスは素直に受け取ろうということ。今は人生の先輩方が通ってきたであろう中年の危機に差しかかり、身の丈で生きていくことを受け入れる修業の真っ最中です。

▽こじま・けいこ 1972年、豪州生まれ。学習院大学法学部卒業後、TBSアナウンサーに。2010年の退社以降、タレント、エッセイストなどとして活動。現在は家族の拠点を豪パースに移し、自身は日本と往復する生活を送っている。4月に最新刊の小説「ホライズン」(文藝春秋)を上梓したばかり。

最新の芸能記事

日刊ゲンダイDIGITALを読もう!

  • 芸能のアクセスランキング

  1. 1

    “3悪人”呼ばわりされた佐々木恭子アナは第三者委調査で名誉回復? フジテレビ「新たな爆弾」とは

  2. 2

    フジテレビ問題でヒアリングを拒否したタレントU氏の行動…局員B氏、中居正広氏と調査報告書に頻出

  3. 3

    フジ調査報告書でカンニング竹山、三浦瑠麗らはメンツ丸潰れ…文春「誤報」キャンペーンに弁明は?

  4. 4

    菊間千乃氏はフジテレビ会見の翌日、2度も番組欠席のナゼ…第三者委調査でOB・OGアナも窮地

  5. 5

    フジテレビ“元社長候補”B氏が中居正広氏を引退、日枝久氏&港浩一氏を退任に追い込んだ皮肉

  1. 6

    広末涼子容疑者は看護師に暴行で逮捕…心理学者・富田隆氏が分析する「奇行」のウラ

  2. 7

    中居正広氏《ジャニーと似てる》白髪姿で再注目!50代が20代に性加害で結婚匂わせのおぞましさ

  3. 8

    やなせたかしさん遺産を巡るナゾと驚きの金銭感覚…今田美桜主演のNHK朝ドラ「あんぱん」で注目

  4. 9

    フジ反町理氏ハラスメントが永田町に飛び火!取締役退任も政治家の事務所回るツラの皮と魂胆

  5. 10

    女優・佐久間良子さんは86歳でも「病気ひとつないわ」 気晴らしはママ友5人と月1回の麻雀

もっと見る

  • アクセスランキング

  • 週間

  1. 1

    中居正広氏《ジャニーと似てる》白髪姿で再注目!50代が20代に性加害で結婚匂わせのおぞましさ

  2. 2

    中居正広氏は元フジテレビ女性アナへの“性暴力”で引退…元TOKIO山口達也氏「何もしないなら帰れ」との違い

  3. 3

    佐藤健は9年越しの“不倫示談”バラされトバッチリ…広末涼子所属事務所の完全否定から一転

  4. 4

    広末涼子容疑者は看護師に暴行で逮捕…心理学者・富田隆氏が分析する「奇行」のウラ

  5. 5

    パワハラ告発されたJ1町田は黒田剛監督もクラブも四方八方敵だらけ…新たな「告発」待ったなしか?

  1. 6

    矢沢永吉「大切なお知らせ」は引退か新たな挑戦か…浮上するミック・ジャガーとの“点と線” 

  2. 7

    中日井上監督を悩ます「25歳の代打屋」ブライト健太の起用法…「スタメンでは使いにくい」の指摘も

  3. 8

    フジテレビ問題でヒアリングを拒否したタレントU氏の行動…局員B氏、中居正広氏と調査報告書に頻出

  4. 9

    広末涼子容疑者「きもちくしてくれて」不倫騒動から2年弱の逮捕劇…前夫が懸念していた“心が壊れるとき”

  5. 10

    “3悪人”呼ばわりされた佐々木恭子アナは第三者委調査で名誉回復? フジテレビ「新たな爆弾」とは