故井上堯之氏は映画史上屈指の名曲を遺した“異端の音楽家”
グループサウンズの代表的なバンドであったスパイダースの元メンバーにしてミュージシャンの井上堯之さんが2日、亡くなった。享年77。筆者はグループサウンズの大ファンで、10代の前半から彼らのサウンドをむさぼるように聴いていた世代だ。
グループサウンズ全盛時、実のところメインボーカルではない井上さんの印象は強くなかった。ただ後年になり、テレビドラマや映画の音楽で頭角を現したころから、彼の存在がどんどん大きくなっていった。
映画音楽の極め付きは「青春の蹉跌」(74年)と「アフリカの光」(75年)だろう。どちらも萩原健一が主役だ。当時のショーケンは時代の寵児だった。ぼそぼそっとしたしゃべくり、世をすねたようなとっぴな行動、そして、ぶっきらぼうな女との関わり方。すべて、格好が良かった。
そんなショーケンの背後に流れるのが、井上さんの音楽だった。これが見事にショーケンの立ち居振る舞いにフィットしていた。「アフリカの光」のエンディング、ギターソロから入る物悲しくも力強い音質は、映画史上屈指の名曲といっても過言ではない。井上さんの楽曲は覚えやすくリズミカルで、作品をとにかく光り輝かせた。