歌手・女優の坂本スミ子さん パルムドール表彰式の思い出
芝居の理屈聞いて飲んで朝になったら疲れるよ(笑い)。やっぱりミュージシャンと一緒の方が陽気で楽しい。
「楢山節考」のおりんという役は、歯を抜かないと主人公にはなれないと台本を読んだ時に思いました。それで抜いたら、みんなに驚かれましたけどね。パルムドールの時の祝杯ですか。あれは私一人で行きました。緒形拳は大河ドラマの収録に入っていてダメ。それで東映の岡田茂社長に「カンヌに行くくらいのお金は出してよ」って言って(笑い)。
その頃のカンヌ国際映画祭はレッドカーペットもありませんし、派手な衣装を着た女優さんもいなかった。今と違って地味なフランスの映画祭だったんです。私は着物を表彰式用とパーティー用を持って行きました。
その頃、太地喜和子がうどんのCMで着ていたのが素晴らしくて、「あんた、その着物ええな。どこで借りたん?」って聞いて、彼女に紹介してもらって奇麗な着物を借りることができました。
表彰式の時にオーソン・ウェルズが舞台の上で手にキスしてくれて、ホッペにもチュッて(笑い)。うれしくて「おおきに、おおきに」ってトロフィーをもらったのを覚えています。だから、祝杯を挙げた記憶はありません。