部屋に入りたいと言うけれど…強引に追いかけない貴ノ花関
銀座の「姫」で働き始めた24、25歳のころ、熱烈に口説いてきたひとりに、亡くなった貴ノ花関(のちの藤島親方)がいました。
店の中央には鶴田浩二さん、奥には勝新太郎さん、カウンターには石原裕次郎さん、なんて芸能人、スポーツ選手に財界人など、その時、旬な人たちが集まる店だったので、たとえ巨漢の力士でも存在感が薄れるほどお客さま一人一人のオーラが凄かった。そんな異空間の中でも端正な顔立ちが光っていたのが貴ノ花関でした。
いつも和服で店に出ていたので、おかみさんにするならこんな人、とイメージしやすかったのかもしれません。彼は私を見るなり求婚してきました。お断りするとお兄さんの二子山親方まで連れて、嫁にしたいとアピールしてきました。
食べることも人付き合いも好きですが、私はおかみさん業にも、子供を産むことも興味がなかったのです。プレゼントもいろいろいただきました。中でも一番高いのはエルメスの時計。彼は横綱ではなかったけれど、とにかく人気があって、勝てばタニマチの方からたくさんご祝儀がはずまれたので、相当なお金持ちだったのだと思います。