「男と女」大人の心を打つ60年代の一途なメンタリティー
1966年 クロード・ルルーシュ監督
作曲家のフランシス・レイ(86)が死去した。本作は彼の出世作だ。
カーレーサーのジャン(ジャン・ルイ・トランティニャン)は息子を寄宿舎に送り届けた帰り道、アンヌ(アヌーク・エーメ)という女性をパリまで送る。彼女の夫が映画のスタントマンだと聞いて食事に誘うが、夫は撮影事故で死亡したと告げられる。アンヌの美しさに引かれたジャンは翌週、子供を交えて食事。レース事故で重体になったときに妻が自殺したことを明かし、ラリーに出場する。
レース後、アンヌから「愛してる」との電報を受け取ったジャンは夜通しハンドルを握って彼女の元に急ぐ。だがベッドで体を合わせながらもアンヌの脳裏には亡き夫の幻影が蘇るばかり。2人の間に風が吹き抜け、ジャンはクルマで、アンヌは列車でパリに戻るのだった……。
孤独な男女のドラマ。空は一貫して曇天だ。雨滴に打たれながら大きな出来事もなく、2人の心の触れ合いが描かれる。
今の若者には本作を「退屈だ」「人物の心理が理解できない」と評する向きもいる。愛を告白しながら亡夫を忘れられないことに違和感を覚えるらしい。一理あるが、それでは人間が分かっていない。