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ラリー遠田お笑い評論家

1979年、愛知県名古屋市生まれ。東大文学部卒。テレビ番組制作会社勤務を経てフリーライターに。現在は、お笑い評論家として取材、執筆、イベント主催、メディア出演。近著に「お笑い世代論 ドリフから霜降り明星まで」(光文社新書)などがある。

M-1舌禍事件の“主犯”とろ久保田は泥水をすすり続けていた

公開日: 更新日:

 芸人としての収入が足りず、久保田は生活のためにリヤカーを引いて石焼き芋を売ったり、知り合いのホステスの犬の散歩をして日銭を稼いでいた。妻の財布からこっそりお金を抜いて警察を呼ばれたこともあった。

 そんな妻とは上京後に離婚することになり、精神的に極限まで追い詰められた久保田は「東京は『頭が狂う』と書いて『頭狂』です」という言葉を残すほどだった。

「M―1」では「結成15年以内」という出場資格が定められている。2002年に結成したとろサーモンにとって、2017年の「M―1」は正真正銘のラストチャンスだった。

 決勝進出が決まった直後のインタビューの際、久保田は興奮冷めやらぬ様子で「神様がいた! 神様がいた!」と何度もつぶやいていた。

 久保田の言う通り、神様はいた。その後、決勝戦の激闘を制して、とろサーモンは王者となった。業界内で誰もが認める才能を持ちながら、運に見放され、泥水をすすり続けた2人が、最後の最後に栄冠に輝いた。優勝の後、久保田はツイッターでこんな言葉を残していた。

「これは汗と血の代価で成し遂げた偉大なる勝利です」

 久保田には、優勝までに流してきた汗と血のことを改めて思い出し、舌禍事件を真摯に反省してもらいたいものだ。

【連載】2019 新春「笑」芸人解体新書

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