父より人気…勸玄は“海老蔵の息子”から一人前の役者に成長
正月は東京で4劇場、大阪も含めて5劇場で歌舞伎公演がある。最近の歌舞伎は新作が多いが、正月は落ち着いている。
国立劇場は尾上菊五郎劇団の「姫路城音菊礎石」。飽きさせないが、とりたてて新鮮味はない。偉大なるマンネリで、これが大事なのだ。
初日を待たずして全日完売となったのが、新橋演舞場での市川海老蔵の座頭公演。劇場の客席数が違うので単純に比較はできないが、いま最も客を呼べるのが海老蔵であることを証明している。もっとも最近は、海老蔵よりも息子・堀越勸玄のほうが人気あり、今月は昼・夜ともに出演。
これまでの勸玄は新作で当て書きされた役に出ていたが、今月は古典の「極付幡随長兵衛」で、息子・長松を演じた。普段は劇団所属のプロの子役(という言い方も変だが)が演じる役で、セリフも長いし、何回も登場する。「海老蔵の息子」として添え物として登場するのではなく、劇の重要な登場人物としての出演だ。勸玄は来年、新之助になるが、すでに一人前の子役である。実際の父子で父子の役を演じるのは、簡単なようで、かえって難しいのではなかろうか。虚実を混乱せずによくやっている。夜の部では「十一世市川團十郎生誕百十年」の「牡丹花十一代」に勸玄と姉・麗禾も出て万雷の拍手を浴びていた。