名匠ロブ・ライナー“1人3役” 意欲作「記者たち」への思い
――そのメディアは世界的にますますの劣化が指摘されています。
「さかのぼると、約50年前、CBSテレビで『60ミニッツ』というニュース番組のスタートがあると思います。もともとニュースは誰もが受けられる公的サービスのように見られ、テレビ局はたとえ赤字になってもそれを流す義務があるかのように捉えていたのですが、この番組から、ニュースは扱い方によって収益性が上がる商品となっていった。それでニュースメディアが大企業の傘下になり、のみ込まれ、収益性を最優先する企業や株主に縛られていきます。だから権力の監視という本来の役割をまっとうしにくくなっているのは、知っておくべきだと思います。政権批判などはそれなりの覚悟が求められ、フリーではないのです」
――今後メディアの機能不全がますます加速していく可能性もあると。
「記者が独立性を持って真実を見つけ、民衆に届けることができなければ、ディザスター(大惨事)が起こりかねない。危険な状況が目前というのに『そんなものはないんだ』と権力者が強弁し、知らん顔なのですから。それは本当なのかと常に権力側に問い続け、アカウンタビリティーを確保しなければならないのに、そこが危ぶまれている。米国のみならず、世界で次々に強権主義者が現れ、専制政治をはじめているのも、これと無関係ではないでしょう」