森昌子の“還暦引退宣言”から透ける歌手としてのジレンマ
芸能界には「定年」がない。「舞台で死ぬのが本望」という言葉があるように、体力があり需要があれば続けられる。それでも、不祥事などでやむなく引退するケースはあるが、現役中に自ら「引退」を発表する人は少ない。かつてキャンディーズと都はるみが「普通の女の子(おばさん)になりたい」と引退したが、やがて復帰している。仮に引退しても「いずれ戻ってくるだろう」と思われるのが芸能界だったが、そんな既成概念を覆したのが山口百恵さんだった。
人気ピーク時だっただけに惜しむ声は多く、ラブコールが続いたが、すでに復帰はない。百恵さんに継ぐ復帰待望論が上がっていた堀北真希さんも、最近、第2子を妊娠したことで、復帰は遠のいている。芸能関係者によれば、「改めて引退発表せずとも、自然にフェードアウトしていく人が多い。引退発表すれば、仮に戻るときに大義名分が必要。そんな面倒があるのなら、休業という形で、いつでも戻れるようにするほうが賢明」という。
デビュー時は明確でも、引退は不明瞭なままで済む世界である。従って、体力の限界など、はたから見ても分かりやすいスポーツ界と違い、芸能界に引退発表はあまり聞かない。半面、仕事をしていないと、「あの人どうしたのだろう」と余計な詮索をされるのも芸能界ならでは――。