新藤兼人版との違いは?原爆投下直後を描いた「ひろしま」
原爆投下直後の広島の惨状を中心に描いた映画「ひろしま」(1953年公開)が、NHKのEテレで今週16日深夜に放映される。快挙である。今月3日には総合テレビでアニメーション「この世界の片隅に」を放映した。こう続けば、同局が原爆を題材にした映画放映に相当な意欲を持って臨んでいるのが分かる。
「ひろしま」は、原爆体験者がつづった文集「原爆の子」を原作にしている。日教組が地元からカンパを募り、製作にこぎ着けたという。岡田英次、月丘夢路、山田五十鈴、加藤嘉らそうそうたる俳優陣が出演している。
監督の関川秀雄は「日本戦歿学生の手記 きけ、わだつみの声」が有名だ。
ただ筆者からすれば、梅宮辰夫出演の「ひも」など東映作品の何本かが印象深い。いずれも娯楽作品という枠のなか、社会の複雑な仕組みをリアリズム的な手法を用いて描こうとの意識が強かった。原爆投下直後の描写にこだわったという「ひろしま」の表現方法と相通じるところがあるかもしれない。
実は「原爆の子」を原作とした作品が、もう一本ある。新藤兼人監督の「原爆の子」(1952年公開)だ。一般的には「ひろしま」より知られるが、こちらは被爆者のその後を追うことに主眼が置かれている。滝沢修が被爆者を演じ、原爆を呪うシーンがある。そこに「ゴジラ」で知られる伊福部昭の「ゴーン、ゴーン」という轟音を伴う曲が流される。その場面では、思わず身の毛がよだったことを覚えている。
筆者は「ひろしま」は見ていない。今回見て、新藤版と比べてみたい。映画人が同じ原作で原爆投下から7、8年の時点で原爆の映画を作る。とてつもないことだ。今の映画人にその気構えはあるか。問われているのは、現代の映画だと思う。