「東京裁判」4時間37分に凝縮された日本人全員の“十字架”
1983年 小林正樹監督
第35回ベルリン国際映画祭国際評論家連盟賞を受賞。渋谷「ユーロスペース」で上映中だ。先日デジタルリマスター版BD&DVDが発売された。
内容はご存じのとおり。1946年5月から48年11月まで続いた「極東国際軍事裁判」の記録映像にニュース映像などを絡め、東条英機らA級戦犯の戦争責任を語っていく。上映時間4時間37分だが、見どころ満載なので、あっという間だ。
ポツダム宣言受諾に始まり、アジア太平洋戦争で軍部がしでかした謀略的犯罪が次々と暴かれる。満州事変、日中戦争、真珠湾攻撃など、いわゆる「15年戦争」の検証だ。本作を見れば、あの戦争で日本人が何をしたかがよく分かる。
監督が「人間の條件」の小林正樹だけあって戦争の罪悪に切り込んでいくが、右派の人々が敵視する「平和に対する罪」「人道に対する罪」が事後法だったことにも言及する。「当時の国際法学者は戦争行為自体を犯罪と見ていなかった。ある行為を後になってから起訴するのは違法である」との主張も冷静に盛り込んだ。日本側弁護人のブレイクニーが語る「真珠湾攻撃が殺人であるなら、われわれは広島に原爆を投下した国の元首の名を挙げることができる」という反証は有名だ。