「パラサイト」の衝撃 “半地下”生活は対岸の火事にあらず
■世界に蔓延する格差社会を活写
カビの生えた半地下住宅に暮らすキム一家は、ろくな仕事もなく困窮を極めている。だが長男のギウ(チェ・ウシク)がIT長者の屋敷の家庭教師に就いたのをいいことに、身内だと明かさずに妹ギジョン(パク・ソダム)を美術の家庭教師に推薦。彼らは狡猾に、屋敷にパラサイト=寄生し始めるのだった。
監督が学生時代に金持ちの家で家庭教師のバイトをしたときの経験を生かしたオリジナル脚本。経済格差の上層と底辺の住民が交わった時の悲喜劇を、強烈な社会風刺とショッキングな結末で見せる(PG12作品)。
「真面目な労働者だったキム一家の父は、チキン店を開業して失敗し“半地下”生活に落ちぶれてしまった。そんな彼と“地上”の金持ち家族の暮らしぶりを鮮烈に対比させるため、両者の家は街並みごとセットで設計されました。ポン・ジュノ監督はかつて右派政権時代、反政府的な作風などと難癖をつけられ、国家情報院のブラックリストに入れられていたほどの気骨ある映画作家です。今回も、これほどの“格差表現”にこだわった映画作りからは、現代社会への強い怒りが感じられます」(前田氏)
カンヌ映画祭のパルムドールは是枝裕和監督の「万引き家族」に続いて「パラサイト」が受賞。
新自由主義経済がもたらした格差問題は世界規模で顕在化。それでも日本は対岸の火事だと思っている人は“半地下”からのSOSに気が付いていないだけだ。