「感染列島」が予見したコウモリの毒性と人工呼吸器不足
新型コロナの蔓延については、政府の対応が後手に回ったとの指摘がある。政府が事前にこの映画を見ていればもっと明確に事態を予測できていたのではないかと思えるほど現在の状況に近いのだ。
新型コロナの感染源は武漢市のコウモリとされているが、本作でもウイルスの宿主は東南アジアのコウモリだ。人工呼吸器が圧倒的に足りないのも今の日本の医療体制と同じ。映画では意識不明の幼い男児から呼吸器を外して大人の治療に使わざるえない。自衛隊が出動して町を封鎖。住民は狭い地域に閉じ込められ、パニックで物資の買い占めに走る。極限に追い詰められた人間の恐怖と集団ヒステリーが生々しい。松岡と栄子のロマンスを語る浪花節な演出はいかにも日本映画調で鼻白んでしまうが、まあ仕方ないだろう。
映画と現実を比べると現実のほうが深刻だ。現下のウイルスは「ヒト・ヒト感染」が進むにつれて変異を起こし、より凶悪になった。武漢では子供は感染しなかったが、日本では0歳の女児が感染。英国では21歳の女性が死亡した。ウイルスが狂暴化しているのに若者はK‐1の試合に殺到し、ライブハウスで踊り狂っている。