ブルーインパルスの「かっこいい」に利用されないように
ブルーインパルスといえば60代以上の人間にはある種の刷り込まれた思い出がある。1964年の東京オリンピック開会式。会場の上空にジェット雲でキレイに描かれた五輪のマーク。その飛行技術に驚かされ、当時少年だった私たちは興奮したものだ。
そのブルーインパルスが今回の東京オリンピックでも再びそのパフォーマンスを演じるはずだったとは聞いていた。
それがある日突然、東京の空に美しい直線を描いた。ツイッター上に次々と、青い空に何本もの白いジェット雲がのびる写真が投稿される。私、最初はただ単に「キレイだな」「カッコいい」と思った。何よりもコロナ禍の中、ゆっくり空を見るなんてことがなかったので、久しぶりにのどかなひと時だった。それが医療関係者を励ますためのものだったということはあとで知った。
そして総理が国会をいったん抜け出してまで空に拍手している映像を見た。それから医療関係者がみんな空を見ている一枚の写真を見た。
「ん、待てよ」という気持ちになった。そして一部の医療関係者の「空なんか見てる暇ない。そんな金あったら現場に回してくれ」という意味合いのツイートを何件か見るにつけ、一般の人が「わーキレイ」と呟いているのに「いいのかな」という思いが頭をもたげてきた。