著者のコラム一覧
本多正識漫才作家

1958年、大阪府生まれ。漫才作家。オール阪神・巨人の漫才台本をはじめ、テレビ、ラジオ、新喜劇などの台本を執筆。また吉本NSCの名物講師で、1万人以上の芸人志望生を指導。「素顔の岡村隆史」(ヨシモトブックス)、「笑おうね生きようね いじめられ体験乗り越えて」(小学館)などの著書がある。新著「1秒で答えをつくる力──お笑い芸人が学ぶ『切り返し』のプロになる48の技術」(ダイヤモンド社)が発売中。

山里亮太は努力の天才“お笑い偏差値”の低さを努力で補った

公開日: 更新日:

 NSCを卒業してから数年後に蒼井優さんとのキューピッド役にもなった、しずちゃんという得難い相方と出会い、これまでの男女コンビとは明らかに違う形の漫才を作り上げ「M―1グランプリ2004」で準優勝。瞬く間に全国区の人気を獲得したのはご存じの通りです。

 ある日、私がアドバイザーをしていた若手の劇場「baseよしもと」の楽屋で山ちゃんの大きなカバンを持ち上げたら、その重いこと。

「なに入ってんねん?」と尋ねると、カバンを開けて中を見せてくれました。そこには「政治」「経済」「外交」などさまざまなジャンルの文庫からハードカバーまで本が7冊。「こんなん持ち歩いてんのん?」と驚く私に山ちゃんは真顔で、「先生、さんまさんや紳助さんに『山里どうやねん?』て聞かれた時に答えられないと、僕の席(レギュラー)なくなっちゃうんです。人生でいまが一番勉強してると思います」。

 すでに人気を不動のものにしていた山ちゃんの言葉に衝撃を受けました。

 それからしばらくして出会った際に「メモはしっかり取ってるか?」と聞いた時にも「はい、食事をしてる時におもしろい話を聞いたら、トイレに行って忘れないうちにスマホにメモしてます」とその姿勢に変わりはありませんでした。それが「スッキリ」のあの“天の声”での当意即妙なコメントにつながっていると思います。山ちゃんが「天才はあきらめた」という文庫を出版した時、メールで贈った言葉は「君は努力の天才です!」でした。

 奥さんがかすがいになって、キューピッド役をつとめてくれたしずちゃんとのコンビの絆もより強くなった山ちゃん。地道な努力が一番の近道だと山ちゃんを見るたびに思います。

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