<17>東京地裁立川支部の廊下で若い女性弁護士に突然土下座した
ドン・ファンの裁判はほとんどが本人訴訟で、自ら原告席で持論を述べた。ただし滑舌が悪いので、裁判長や相手側弁護士が何度も聞き返すことも珍しくなかった。
立川支部のある裁判は、お金を貸した客から訴えられたものだった。相手は都内にある東証1部上場企業に勤めるサラリーマンで、未返却の金が30万円ほど残っていた。
「入金がされていません。返済をお願いします アプリコ」
ドン・ファンは、このようなメールを何度も何度も送信した。これが脅迫まがいの文面であれば即レッドカードであるが、問題になったのは送信時刻で、午前2時半、3時、3時半というように一般的には非常識な時間だった。これを「不当な返却催促である」として30万円の慰謝料を求めてきたのである。
「私は日常、午前1時には起床して、出勤が早いときは2時や3時もありますから勤務時間になります。勤務においてメールで借金の返済を求めたものですから、正常な業務です」
ドン・ファンはこのように抗弁したが、その理屈が通るワケがないのは私にもわかる。