<17>東京地裁立川支部の廊下で若い女性弁護士に突然土下座した
野崎幸助さんは大金持ちに分類される人だったのだろうが、お金が絡むと見境のない行動を取ることもあった。私は自叙伝を作るにあたって彼の裁判を何度か傍聴した。地元の和歌山地裁田辺支部はもちろん、霞が関の東京地裁、東京地裁の立川支部にも足を運んだ。
「ワシがこうやれって言うのを聞かず勝手に進める弁護士がいて、何度もケンカをしてクビにしましたよ。自分たちの利益ばかり考えている悪徳弁護士が多くて困ったもんです」
彼は田辺市内の弁護士とは全員とケンカをしているし、和歌山県内の弁護士も相手にしなかったし、されてもいなかった。弁護士のほうも文句ばかり言うドン・ファンからの依頼は即座に断るので、東京の弁護士を頼むケースが多かったようである。
彼が信頼を寄せていたのは奈良市の有名な弁護士だった。マルサに踏み込まれて脱税を指摘されたドン・ファンを弁護し収監を食い止めたことで、神様のように慕っていた。高齢のため最後の10年ぐらいはドン・ファンの依頼を受けていないが、2017年の暮れに亡くなった際は、ドン・ファンも葬儀に出席をしている。