<40>入籍した戸籍謄本を近所に配布したドン・ファンに早貴被告は絶句
早貴被告は入籍後すぐに東京に向かったので、翌日の「紀伊民報」に2人の結婚の記事というか告知が掲載されたことを知らなかった。
「ほら、記事が載っているよ」
野崎幸助さんがうれしそうに新聞を見せてくれた。お悔やみは金銭が発生するが、結婚は無料で掲載してくれるようだ。
「早貴ちゃんの同意はあったんですか?」
「いや、何も言ってないし、同意は要らんやろ」
この日の夕方、ドン・ファンに誘われて夕食を共にすることになった。近所の料亭や白浜のリゾートホテルへの誘いを断り、私が定宿にしているビジネスホテル内にある和風の定食屋さんに向かった。料亭やホテルの10分の1ほどの値段で食べられるし、そもそもドン・ファンも私も夜はほとんど食べない。つまみ程度で十分なのである。大阪の愛人・菜々ちゃんと番頭格のマコやんも加わった。
「社長、おめでとう」
気配り菜々ちゃんの音頭で4人の生ビールのグラスが音を重ねた。