<40>入籍した戸籍謄本を近所に配布したドン・ファンに早貴被告は絶句
「またまた、社長が大変やで~」
マコやんから電話が来たのは、帰京してすぐのことだった。
「早貴ちゃんとの戸籍謄本を近所に配ってこい、って若い従業員たちに命じて……。個人情報の最たるものやからワシは『やめなさい』って進言したんやけど、聞く耳を持たんから」
「なんで、そんなことをするんです?」
「本当に入籍したことをアピールしたかったようや。変わり者やからなぁ~」
あぜんとする話だった。ドン・ファンが怪死した後、近所をしらみ潰しに取材をかけたマスコミは戸籍謄本が配られたのを知ることになる。札幌にある早貴被告の実家を取材できたのは、この戸籍謄本があったからであろう。
「札幌に行かせたのは吉田さんでしょう」
事件発覚後に早貴被告は私をなじった。
「オレはそんなことをしていないよ」
そのように言った私をフォローするようにマコやんが続けた。
「入籍後に社長が戸籍謄本を近所に配らせたんや」
「本当ですか?」
「ホンマやで。信じられないだろうけど」
早貴被告は絶句するしかなかったのである。 (つづく)