飯野矢住代誕生秘話<9>新しい恋人は日比谷野音「伝説のライブ」のドラマーだった
世の中には「バンドマン」と呼ばれる人種がいる。本来なら「ミュージシャン」のはずなのだが、そう呼ばれることはない。無論「アーティスト」と呼ばれることもない。発展途上の意味を含むのは言うまでもない。
アルバイトに精を出しながら、練習に明け暮れ、時折ライブに出演してはわずかな客前で演奏していた。そんな彼らにも、驚くことにファンはいた。もっぱら女性である。熱心にライブに足を運び、自家製のCDを何枚も買い、有料の生写真を一緒に撮る。「グルーピー」と呼ばれる彼女たちが、バンドマンの私生活にまで立ち入るようになり、生活を支えるようにもなるのは時間の問題である。かくして「糟糠の妻」は出来上がる。
裕福な大学生の恋人と別れた飯野矢住代の新しい恋人は、まさに“バンドマン”だった。筆者の手元に一枚のCDがある。タイトルは「Free Spirit 1979.7.14」。表記にある1979年7月14日に行われた、日比谷野外音楽堂のライブ音源を収めたものだ。出演したのはJohnny,Louis&Char。彼らはのちに「PINK CLOUD」と改名し、日本のロックシーンを席巻する。