<58>裏庭に土葬することになった愛犬イブ 早貴被告はゲームに夢中だった
家政婦の大下さんが自室の荷物をまとめていなくなった。掃除、洗濯、炊事、買い物などを任せられるお手伝いさんを新たに探さなければならないから、困るのは野崎幸助さんである。
かつては田辺市内の家政婦斡旋所に依頼したこともあったが、お手伝いさんを盗っ人呼ばわりするトラブルを何度も起こしていたため、向こうから拒否されていた。
「早貴ちゃんにやらせればいいじゃないですか」
リビングで私が言った。
「アレはダメだ。やらないから」
「でも、やらせればいいじゃない」
「……」
ドン・ファンは苦笑するだけだった。きっと早貴被告に家事をやらせることは、最初から諦めていたのだろう。
「結婚するときに、家事はしなくていいって社長に言われましたから」
結婚後に早貴被告が笑いながらしゃべったことがあったが、堂々と家事放棄を言い放つ神経に私は違和感を覚えた。一体、どんな育ち方をしてきたのだろう? 深窓の令嬢のような家柄ではなく、ごく一般的な家庭で育ったようだが、家の手伝いもしなかったらしい。