飯野矢住代誕生秘話<19>「ミス・ユニバースという肩書きは総絞りの着物を着たようなもの」
「はじめは女として最高の名誉だと思ったけど、結局私の生活にはマイナスばかりだったわ。(中略)姫のママ(山口洋子)にこんなことを言われたことがあるんです。あなたのミス・ユニバースという肩書きは、言ってみれば総絞りの着物を着たようなもので、女はいくら脱ぎ捨てようと思っても脱げないものなのよって……。でも、私は脱げると思うんです。だから親の許さない同棲もしたし、妊娠もしたし、大きなお腹をかかえて働きにも出たんです」
■「私だって普通の女」
そして、「ミス・ユニバースの肩書きに執着はない」と前置きしながら、こうも言う。
「私は今まで、特殊な女に見られて、あれは普通の人間じゃないって差別されてきました。でもね、私はいつも心の中では私だって普通の女なんだと思ってきたんですよ」
これが、心の底からの本心とは思わない。思わないが、掴みどころのないコメントでけむに巻いてきた今までの彼女とは、明らかに異なる論調にも映る。記者も「“妾の子”という暗い宿命を背負った意地っ張りの少女にとっては、そういう周囲への反発があったのだろう。それだけに、この成長期の屈折には、いたわりが必要だったのかもしれない」と結んでいる。
ただし、矢住代が求める「いたわり」とは、もちろん同情ではなく、単に優しい言葉だけを指すわけでもなかった。
破局から半年経ったこの頃、矢住代の新たな恋が始まろうとしていた。=つづく