<79>早貴被告は急に口を開くと「社長が大下さんに3000万円を渡してくれって」
早貴被告と家政婦の大下さんはそれほど仲が良くなかったが、ある時から急速に接近した。
野崎幸助さんの通夜・葬儀の相談が終わり、私と大下さん、そして早貴被告の3人でドン・ファン宅のリビングで談笑していたときのことだ。生前のドン・ファンが大下さんに「自分が亡くなったら1000万円を遺産としてあげる」と言っていたことが話題になった。
このことは番頭格のマコやんも金庫番の佐山さんも聞いていたから珍しいことでもない。
「私、社長から『ワシが亡くなったら大下さんに3000万円を渡してくれ』と言われていたんです」
急に早貴被告が口を開いた。
「え、本当?」
大下さんの目が輝いた。
「ヨッシー、聞いたでしょ」
「何を」
「今さっちゃんが言ったこと」
「ああ、社長がさっちゃんに、大下さんに5000万円をあげてくれと言ったこと? うん、聞いていたよ。大下さん、そのように証言してやるから、1000万円のキックバックをよろしくね」