著者のコラム一覧
荒木経惟写真家

1940年、東京生まれ。千葉大工学部卒。電通を経て、72年にフリーの写真家となる。国内外で多数の個展を開催。2008年、オーストリア政府から最高位の「科学・芸術勲章」を叙勲。写真集・著作は550冊以上。近著に傘寿記念の書籍「荒木経惟、写真に生きる。荒木経惟、写真に生きる。 (撮影・野村佐紀子)

<76>最愛のチロは22年生きて、桃の節句の日に骨になった

公開日: 更新日:

 チロちゃんが亡くなったのは3月2日。翌日の3月3日の桃の節句の日に見送ったんだよ。チロの棺を桃の花で飾ってね。チロは22年も生きて、人間の歳で言ったら100歳を超えてたから大往生だったんだけどね。長寿の猫だって、世田谷区から賞状をもらったこともあったんだよ(荒木の愛猫チロは2010年3月2日に息を引き取った。チロとの出会いから別れまでを連載21~25に掲載)。

■入院なんかさせなきゃよかった

 医者には、死因は腎不全だって言われたね。2月の終わりごろから急に調子が悪くなって、モノを食べられなくなって、ガリガリに痩せちゃった。チロを抱っこして病院に連れて行って、入院したほうがいいって医者に言われたから置いてきたんだけどさ、3日後に連れて帰ってきたんだ。だって、狭いケージの中で死なすのはイヤだからね。ずっと、悔やんでいたよ、最後の3日間、病院に入院させたことをね。入院なんかさせなきゃよかった、ずっと一緒にいてあげればよかったってね。陽子が亡くなったときも、チロはずっとそばにいてくれた。そばにいてくれれば、それだけでいいんだよ。

 3月3日にチロの骨を焼いたんだ。ペットの共同墓地みたいなのがあって、「お土戻し」って言うらしいけど、チロの遺骨を土に戻してあげたんだ。チロの骨、やっぱり動物なんだね、手で持って触ったら、粉々になってね…。脆くて、びっくりした。

影の中に真実があるかもしれないね

 これは、チロちゃんの影。今、写真やってる人たちは影を撮ってないよね、影が写ってない。影が主役なんだよ。影が本当の姿だっていうね。影のほうが本当、影の中に真実っていうと変だけどさ、そういうことがあるかもしれないね。

 この影、あとで気がついたけどね、陽子が死んで、降り積もった雪の中にチロちゃんが出て行ったときの形と同じなんだよ。チロが雪のバルコニーにパーっと飛び出して、オレのことを勇気づけるために、雪の中で飛び跳ねてくれたんだ。『センチメンタルな旅・冬の旅』(1991年刊)のラストシーンのチロね(連載42に掲載)。不思議なんだよ。

(構成=内田真由美)
 

最新の芸能記事

日刊ゲンダイDIGITALを読もう!

  • 芸能のアクセスランキング

  1. 1

    松本人志「事実無根」から一転、提訴取り下げの背景…黒塗りされた“大物タレント”を守るため?

  2. 2

    島田洋七が松本人志復帰説を一蹴…「視聴者は笑えない」「“天才”と周囲が持ち上げすぎ」と苦言

  3. 3

    人気作の続編「民王R」「トラベルナース」が明暗を分けたワケ…テレ朝の“続編戦略”は1勝1敗

  4. 4

    小泉今日子×小林聡美「団地のふたり」も《もう見ない》…“バディー”ドラマ「喧嘩シーン」への嫌悪感

  5. 5

    兵庫県知事選・斎藤元彦氏の勝因は「SNS戦略」って本当?TV情報番組では法規制に言及したタレントも

  1. 6

    松本人志が文春訴訟取り下げで失った「大切なもの」…焦点は復帰時期や謝罪会見ではない

  2. 7

    窪田正孝の人気を食っちゃった? NHK「宙わたる教室」金髪の小林虎之介が《心に刺さる》ファン増殖中

  3. 8

    井上真央ようやくかなった松本潤への“結婚お断り”宣言 これまで否定できなかった苦しい胸中

  4. 9

    菊川怜が選んだのはトロフィーワイフより母親…離婚で玉の輿7年半にピリオド、芸能界に返り咲き

  5. 10

    福山雅治は自宅に帰らず…吹石一恵と「6月離婚説」の真偽

もっと見る

  • アクセスランキング

  • 週間

  1. 1

    西武ならレギュラー?FA権行使の阪神・原口文仁にオリ、楽天、ロッテからも意外な需要

  2. 2

    家族も困惑…阪神ドラ1大山悠輔を襲った“金本血縁”騒動

  3. 3

    9000人をリストラする日産自動車を“買収”するのは三菱商事か、ホンダなのか?

  4. 4

    兵庫県知事選・斎藤元彦氏の勝因は「SNS戦略」って本当?TV情報番組では法規制に言及したタレントも

  5. 5

    小泉今日子×小林聡美「団地のふたり」も《もう見ない》…“バディー”ドラマ「喧嘩シーン」への嫌悪感

  1. 6

    国内男子ツアーの惨状招いた「元凶」…虫食い日程、録画放送、低レベルなコース

  2. 7

    ヤンキース、カブス、パドレスが佐々木朗希の「勝気な生意気根性」に付け入る…代理人はド軍との密約否定

  3. 8

    首都圏の「住み続けたい駅」1位、2位の超意外! かつて人気の吉祥寺は46位、代官山は15位

  4. 9

    兵庫県知事選・斎藤元彦氏圧勝のウラ パワハラ疑惑の前職を勝たせた「同情論」と「陰謀論」

  5. 10

    ロッテ佐々木朗希は母親と一緒に「米国に行かせろ」の一点張り…繰り広げられる泥沼交渉劇