Yes!アキトの北海道貧乏時代 クルマで往復10時間の営業のギャラが…たったの1000円
Yes!アキトさん(芸人/31歳)
先月の「R-1グランプリ2022」(関西テレビ、フジテレビ系)決勝に初出場したが、最下位の8位に沈んだYes!アキトさん。早口で細かく一発ギャグを刻むネタが印象的で、仕事は激増中という期待の芸人だ。北海道時代には派遣会社が立ち上げた芸人事務所で第1号になり、上京後はフリーならではの貧乏暮らしをしてきた。
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札幌時代、人材派遣の会社で普通にアルバイトとして登録していたんです。ある日派遣された札幌ドームでのEXILEのライブで、お客さんがトイレに行く際に、混雑しないための会場整理のバイトをしていた最中、マネジャーから「芸人事務所つくるから入れ」と突然言われて。
人材派遣会社が芸人事務所を始めることになり、なぜか僕が第1号に任命されて、ノリで入ってしまいました。
でも、予算がないのでライブをやるにも会場を借りられず、路上ライブを「事務所ライブ」と呼んで行っていました。
今は禁止されてると思いますが、繁華街の閉まっている店の前に手書きの段ボールの看板を置いてネタをやる。でも、多い時は100人くらい立ち止まってくれました。
当時のネタは今と違い、テングのお面に民族衣装を着て熊手片手にオリジナルの伝統芸能ネタをやっていました。後ろを近くの紳士服店の人が紳士服の掛かったハンガーラックをガラガラと押しながら通るから、見てる人はネタが聞き取れなかった(笑)。
営業もやりましたけど、北海道は広いから車を持っている芸人に相乗りして片道5時間かけて行ったり。往復10時間。給与明細見るとギャラが1000円でした。
小さい子供ばかりのお祭りの時はネタの最中に子供が祭りに出た串焼きの串を僕に投げてきて。「危ねえ!」とよけるリアクションをしたらそれがウケてしまい、そのあとずっと串を投げられ続けました。その日のギャラは1000円と串焼き2本。
上京して一人暮らしを始めてからが、かなり貧乏でした。別会社の派遣に勤め、夜は芸人が接客するバーでバイト。ショーパブではないのですが、店長に「ネタやれ」と言われると、お客さんのテーブルの前に立ってネタ。ウケませんでした。時給は1000円ちょっと。
■「R-1」決勝後は仕事や取材がメチャメチャ入った
お金がなかった大きな理由は、養成所に入らなくてフリーだから、お金を払ってライブに出るしかなかったこと。芸人がお金を払って出演するそのエントリー制ライブは1回のエントリー費が4000円かかりました。フリーでもまともな芸人や、関係者とのつながりのある芸人は事務所ライブに出られますから、僕が出るのはまともな芸人が出るライブじゃなかった。例えばaiboみたいなロボットのオモチャと組んでコンビネタをやっていたり。
エントリー制じゃなくて、ライブ前に街中に出てお客を呼び込みしなきゃいけないライブの時は60代のおばちゃんのピン芸人もいました。前期高齢者ですよね。セミリタイアして人生を謳歌したくてネタやっていたのかもしれません。節約ではご飯をだいぶ切り詰めていました。カップ麺の小袋の調味料を使わずに食べ、調味料はパスタに使うとか。
今の芸風は上京時につかみ、細かいチェンジを繰り返して「R-1」の時のようなスタイルになりました。
「R-1」に出た後は優勝者にはかなわないですが、仕事や取材がメチャメチャ入りました。札幌の芸人、やすと横澤さんというコンビの横澤さんは本番後すぐ「感動した! 励ましになるかわからないけどエールを送る」と電話がきて、後日20キロの米を送ってくれた。うれしかったです。地元の人たちにとって恥ずかしくない芸人になるのが僕の目標ですから。それと温泉、サウナや水風呂などお風呂全般が大好きなので、今後の夢は自分専用の温泉が持てるくらいに芸人を頑張りたい。だから、温泉リポートの仕事もしたい。そして将来はオリジナル温泉が欲しい! これからもよろしくお願いします。
(聞き手=松野大介)
▽本名=皆月明人 1990年6月、北海道生まれ。2012年から芸人活動。途中からピン芸人に。「ツギクル芸人グランプリ2021」準優勝。