僕は一之輔さんみたいなパンチ力がない どんな噺でも「そこそこ」を心がけて
「今、イチ押しの落語家は?」と聞かれると、こう答える。「三と一」。その心は、柳家三三と春風亭一之輔である。一之輔はすでに登場願った。今回、満を持して三三に語ってもらう。高座姿、調り口、しぐさ、あらゆる面で流麗だ。現在、都市圏内で最も数多く独演会を催す気鋭である。まずは、年間に何席くらい落語を演じているのか聞いてみた。
「昨年はコロナ禍もあって600席未満でしたが、今年は半年で400席を超えてます。寄席が好きなのでしょっちゅう出ているのと、イイノホールと横浜にぎわい座で月例の会をやってますので」
独演会は私もよく見に行くが、どこも盛況である。とはいえ、最初からそうだったわけではない。
「もちろんです。真打ちになる直前から始めたのですが、50人程度の小さな会場でも埋まらなかった。そのことを当時お世話になっていた談春(立川)兄さんに嘆いたら、言われました。『まず、50人集める努力をしろ。噺家なら、そのくらいできなくてどうする。達成できたら、次に100人の会場にする。それで最終的に大きな会場にすればいいんだ』と。とってもいいアドバイスをしていただきました」