僕は一之輔さんみたいなパンチ力がない どんな噺でも「そこそこ」を心がけて
後年も談春には恩を受けるのだが、それは後ほど語ってもらおう。
「独演会ばかりじゃいけない。寄席に出ることで、噺のバラエティーが豊富になります。噺との相性は、自分の好き嫌いとは別で、難しいものです。僕は一之輔さんみたいなパンチ力がないので、どんな噺でも『そこそこ』を心がけてます」
そこそこなんてとんでもない。近年の三三は、どんな噺でも80点から満点をつけられる。自己評価が低いのでは。
「そうおっしゃっていただけるのはありがたいですが、自分ではまだまだと思ってます。このままいくと、本当にそこそこの落語家で終わってしまうので、さらなる精進をしなければと心がけてます」
この謙虚さが、「久々の江戸前の落語家」と推奨するゆえんである。=つづく
(聞き手・吉川潮)