渡辺真知子さんを「行け!」と羽ばたかせてくれたのは、中島みゆきさんだった
渡辺真知子さん(シンガー・ソングライター/66歳)
「迷い道」「かもめが翔んだ日」などのヒット曲で知られる渡辺真知子さん。デビュー45周年を迎え、9月にシングル「二雙の舟/カナリア」をリリースした。両曲とも、3年前に出演した中島みゆきの代名詞ともいえる舞台「夜会」が縁で実現したもの。舞台は体が悲鳴をあげるほど超ハードなものだった。
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中島みゆきさんとの出会いはずっと昔で、ヤマハのポプコン(ポピュラーソングコンテスト)が初めてでした。1975年の春と秋にみゆきさんと一緒に2回続けて出場し、私は第9回で「特別賞」を受賞し、みゆきさんは「時代」(第10回)でグランプリを受賞しました。
みゆきさんは私より4つ年上でとてもお姉さんに思えましたね。「時代」はとにかく圧倒的な曲ですから、グランプリは「堂々の」という形容がふさわしい感じでした。その時にどんな会話を交わしたのかはっきり覚えていませんが、みゆきさんに「真知子ちゃん、真知子ちゃん」と呼ばれたのだけは覚えています。
77年、私は「迷い道」でデビューしましたが、なぜかお目にかかる機会がなく、2019年のみゆきさんの舞台「夜会」(vol.20「リトル・トーキョー」)で声をかけていただき、四十数年ぶりに再会しました。「夜会」はみゆきさんが自ら脚本を書いて舞台で歌う、ライフワークといえる大切な舞台。私が出演した回は光と影の対照的な2人のお話で、みゆきさんが影。私が光。なぜ? ですが、私がオリジナルの他にジャズやラテンを歌う姿を見て、「光をやる人がいた!」という感じだったのかなと思います。
その「夜会」では私は全20公演に出演しました。みゆきさんの頭の中にある宇宙を、みんなでどれだけ具現化できるかという舞台なので、出演者のモチベーションは普段のステージとは全然違っていましたね。
舞台稽古の時にみゆきさんは私のために時間を割いて「言いたいことがあったら遠慮しないで言っていいのよ」と言ってくれたんです。私の持ち味を認め「渡辺、行け」と羽ばたかせてくれた感じで、最初にイメージしていたよりももっと大きな人でしたね。
ステージは6度の傾斜がついていて、斜めで踊ったり、階段の上り下りもありましたが、みゆきさんはお客さまが見やすくわかっていただけるように気を配っていらっしゃいました。みゆきさんは本当に愛情が深くてしかも温かい。わからないことがあったら人任せにせず、全部自分で調べるストイックな方です。