渡辺真知子さんを「行け!」と羽ばたかせてくれたのは、中島みゆきさんだった

公開日: 更新日:

恋をした時と似ている感覚

 李珠(リズ)という私の役の出番は第1部の途中からですが、どのくらいのトーンで歌い出すか、みゆきさんに合わせてどう盛り上げていけばいいか……それを考えながらなので一瞬も気が抜けませんでした。2日やって1日お休みというスケジュールで、公演期間の半分をこなした頃には体が相当きつくなって、休演日にリハビリしないと次の日に立てないくらい、精も根も尽き果てました。そんな状態の時に24台のカメラでDVD用の映像を撮る日がありまして。つらくてもしかめっ面もできない。筋肉痛やら膝関節痛。もう勘弁(笑)。若い人も音をあげていました。舞台中は大好きなお酒も飲まず、食事も疲れすぎて味なんかわからないくらい。

 それはコロナが上陸する前年でしたが、「夜会」ができて本当によかったと思います。そしてコロナの3年間を経て今年は私のデビュー45周年。さて、どうしようと考えました。

「夜会」の中ではワンコーラスの「カナリア」という書き下ろし曲も歌ったのですが、音楽プロデューサーの瀬尾一三さんが「みゆきさんは真知子さんのためならフルサイズの1曲にしてくれるんじゃない?」とおっしゃっていたのを思い出したんです。それでみゆきさんに改めてお願いしたら、「それは45周年の渡辺真知子のために書くの? それとも李珠という役を考えて書いたらいいの?」と問われ、熟慮した上で「両方」とお願いしたところ、素晴らしい「カナリア」ができました。

 ただ、みゆきさんの曲ですから、アルバムの中の1曲として発表するのではなく、出すならきちんと、やっぱりシングルしかないと思い切りました。

 そしてシングルとして発表するならもう1曲「夜会」のナンバーを入れたい。それで挑戦したのが「二雙の舟」。みゆきさんが30年以上前に作ったテーマソングです。この曲は、舞台で演じた時、最後のワンコーラスですら壮大な盛り上がりで興味がありました。みゆきさんからただちに許可もいただき、「夜会」と同じメンバーの演奏で歌わせていただきました。最長となる8分を超える組曲のような大作です。瀬尾さんは「みゆきさんが歌う『二雙』は荒れ狂った海に出ていく小舟の感じだけど、真知子さんのはそれよりも大船でキラキラした水面のところに行きつく船の感じ」とおっしゃいましたけど(笑)。

 歌いだしでは泣けちゃって歌えない時もありましたが、レコーディングは「夜会」の本番と同じように生演奏で最後まで歌い切ったら、ツーテイクでOKが出ました。それからは寝ても覚めても「二雙の舟」が頭から離れない。これって恋をした時に似ているなと思っています。

(聞き手=峯田淳/日刊ゲンダイ)

♪45周年記念、28枚目のシングル「二雙の舟/カナリア」リリース
♪11月23日 デビュー45周年記念コンサート2022「青空に誓って」(東京国際フォーラムホールC、開演16時)

最新の芸能記事

日刊ゲンダイDIGITALを読もう!

  • アクセスランキング

  • 週間

  1. 1

    ロッテ佐々木朗希は母親と一緒に「米国に行かせろ」の一点張り…繰り広げられる泥沼交渉劇

  2. 2

    米挑戦表明の日本ハム上沢直之がやらかした「痛恨過ぎる悪手」…メジャースカウトが指摘

  3. 3

    陰で糸引く「黒幕」に佐々木朗希が壊される…育成段階でのメジャー挑戦が招く破滅的結末

  4. 4

    9000人をリストラする日産自動車を“買収”するのは三菱商事か、ホンダなのか?

  5. 5

    巨人「FA3人取り」の痛すぎる人的代償…小林誠司はプロテクト漏れ濃厚、秋広優人は当落線上か

  1. 6

    斎藤元彦氏がまさかの“出戻り”知事復帰…兵庫県職員は「さらなるモンスター化」に戦々恐々

  2. 7

    「結婚願望」語りは予防線?それとも…Snow Man目黒蓮ファンがざわつく「犬」と「1年後」

  3. 8

    石破首相「集合写真」欠席に続き会議でも非礼…スマホいじり、座ったまま他国首脳と挨拶…《相手もカチンとくるで》とSNS

  4. 9

    W杯本番で「背番号10」を着ける森保J戦士は誰?久保建英、堂安律、南野拓実らで競争激化必至

  5. 10

    家族も困惑…阪神ドラ1大山悠輔を襲った“金本血縁”騒動