「ほどよい不完全さ」をあえて残しておくのが作詞のむずかしさでもあり、おもしろみでもある
吉増剛造の恩恵にあずかっていない現代詩ファンはいない。だって現代詩という日本語の定義づけに関わった張本人なのだから。若き日に彼の『黄金詩篇』に感電したひとも少なくないはずだ。タイムマシンで30数年前に戻り、文芸創作より音楽に淫するボンクラ文学部生のぼくに「吉増剛造が話したいってよ」と言ってもまず信じないだろう。
あのころのぼくは、吉増さんが朗読パフォーマンスの第一人者でもあり、ジャズミュージシャンと共演が多いことまでは知らなかったから。いま訊きたいことは山ほどある。詩と詞を分かつ線も見えてくるだろうか。対談がたのしみだ。
なお『眩暈』は東京都写真美術館ホールで25日まで上映中(17.19日休映)。順次各地で。