日曜劇場「海に眠るダイヤモンド」野木亜紀子脚本の狙いと問いかけ
日曜劇場「海に眠るダイヤモンド」(TBS系)が中盤に入ってきた。
1955年、大学を卒業した鉄平(神木隆之介)は故郷の炭鉱の島に戻り、働き始めた。一方、2018年の東京に住むホストの玲央(神木の2役)は、会社経営者のいづみ(宮本信子)と知り合い、彼女の秘書を務めることになった。
物語は2つの時代と場所を行き来しながら展開されている。当初、脚本の野木亜紀子の狙いは、昭和の経済成長の光と影を描くことではないかと思った。だが、どうやらそれだけではないようだ。
それは先日の第4話に表れていた。鉄平の家では、20歳だった長兄がビルマ(ミャンマー)で戦死。16歳と14歳の姉は福岡の空襲で命を失っていたのだ。父の一平(國村隼)は、名誉なことだと信じて息子を戦場に送った自分をずっと責め続けている。また鉄平の幼なじみである百合子(土屋太鳳)は、母や姉と出かけた長崎で原爆に遭遇していた。姉はその時に亡くなり、母も長く患った末に白血病で逝った。いつか自分も発症するのではないか。百合子はその恐怖を抱えながら生きている。
鉄平が言う。「死んだ者たちは帰らない。過去の過ちは消えない。私たちは祈る。今度こそ間違えないようにと」。しかし70年後の今、この国は胸を張って「間違えていない」と言い切れるだろうか。野木の強烈な問いかけがそこにある。