著者のコラム一覧
荒木経惟写真家

1940年、東京生まれ。千葉大工学部卒。電通を経て、72年にフリーの写真家となる。国内外で多数の個展を開催。2008年、オーストリア政府から最高位の「科学・芸術勲章」を叙勲。写真集・著作は550冊以上。近著に傘寿記念の書籍「荒木経惟、写真に生きる。荒木経惟、写真に生きる。 (撮影・野村佐紀子)

<51>接写レンズで撮ったモノの「部分」にはエロスとタナトスをすごく感じる

公開日: 更新日:

エロトス(2)

 この写真、おもしろいだろ。『エロトス』(1993年刊写真集)に入れた写真で、歯磨きしているセルフポートレートなんだよ(①)。リングストロボの形が予想以上にまんまるで、おまけに輪っかの中にもうひとつオマケがあって、嬉しかったね。偶然が味方してくれたんだよ。

■リングストロボはすべてをさらけ出すライティング

 エロス(性)とタナトス(死)が同時に入ってる。だからエロトスなんだよ(「エロトス」は<エロス>と<タナトス>を組み合わせた荒木の造語)。「エロトス」は接写レンズとリングストロボで撮ってる。接写レンズで撮ったモノの「部分」には、エロスとタナトスをすごく感じるね。すごくスケベなんだよ。それに「部分」っていうことと、もうひとつ、リングストロボの「コト」だね。リングストロボっていうのは、言ってみれば手術台のライティングなんだ。手術のときに上から光を当てても、医者が自分の頭が影にならないように、手元を明るくできる無影灯というライティング、それに近いんだ。リングストロボは、手術台を照らしてる無影灯みたいに影ができない。全方位から、すべてをさらけ出すライティングなんだよ。

やっぱり花はエロティック、花陰はいいねぇ

 これは、水に浮かぶ女性のお尻だね(②)。やっぱり花はエロティック、花陰はいいねぇ(③)。蛇口から出る水も、ストロボだと水がこういう形になるんだよ(④)。この宙から吊られているのは、名作「妻が逝って首吊り自殺したA」、オレのオブジェの第一号だね(⑤)。これはね、陽子がいつも使ってた、フランスパンを切ってた台だね。そのパン切りまな板に色を塗って、取っ手のところがオレの顔で、彼女の陰毛を髪の毛にしたの。で、紐は彼女の着物の帯なんだよ。

 なんでも、どこでも、接写してストロボ。光らせると、すべて愛の「部分」になる。エロトスとは写真の「コト」であり、人生の「コト」なんだ。

(構成=内田真由美)

最新の芸能記事

日刊ゲンダイDIGITALを読もう!

  • 芸能のアクセスランキング

  1. 1

    松本人志「事実無根」から一転、提訴取り下げの背景…黒塗りされた“大物タレント”を守るため?

  2. 2

    島田洋七が松本人志復帰説を一蹴…「視聴者は笑えない」「“天才”と周囲が持ち上げすぎ」と苦言

  3. 3

    人気作の続編「民王R」「トラベルナース」が明暗を分けたワケ…テレ朝の“続編戦略”は1勝1敗

  4. 4

    小泉今日子×小林聡美「団地のふたり」も《もう見ない》…“バディー”ドラマ「喧嘩シーン」への嫌悪感

  5. 5

    兵庫県知事選・斎藤元彦氏の勝因は「SNS戦略」って本当?TV情報番組では法規制に言及したタレントも

  1. 6

    松本人志が文春訴訟取り下げで失った「大切なもの」…焦点は復帰時期や謝罪会見ではない

  2. 7

    窪田正孝の人気を食っちゃった? NHK「宙わたる教室」金髪の小林虎之介が《心に刺さる》ファン増殖中

  3. 8

    井上真央ようやくかなった松本潤への“結婚お断り”宣言 これまで否定できなかった苦しい胸中

  4. 9

    菊川怜が選んだのはトロフィーワイフより母親…離婚で玉の輿7年半にピリオド、芸能界に返り咲き

  5. 10

    福山雅治は自宅に帰らず…吹石一恵と「6月離婚説」の真偽

もっと見る

  • アクセスランキング

  • 週間

  1. 1

    西武ならレギュラー?FA権行使の阪神・原口文仁にオリ、楽天、ロッテからも意外な需要

  2. 2

    家族も困惑…阪神ドラ1大山悠輔を襲った“金本血縁”騒動

  3. 3

    9000人をリストラする日産自動車を“買収”するのは三菱商事か、ホンダなのか?

  4. 4

    兵庫県知事選・斎藤元彦氏の勝因は「SNS戦略」って本当?TV情報番組では法規制に言及したタレントも

  5. 5

    小泉今日子×小林聡美「団地のふたり」も《もう見ない》…“バディー”ドラマ「喧嘩シーン」への嫌悪感

  1. 6

    国内男子ツアーの惨状招いた「元凶」…虫食い日程、録画放送、低レベルなコース

  2. 7

    ヤンキース、カブス、パドレスが佐々木朗希の「勝気な生意気根性」に付け入る…代理人はド軍との密約否定

  3. 8

    首都圏の「住み続けたい駅」1位、2位の超意外! かつて人気の吉祥寺は46位、代官山は15位

  4. 9

    兵庫県知事選・斎藤元彦氏圧勝のウラ パワハラ疑惑の前職を勝たせた「同情論」と「陰謀論」

  5. 10

    ロッテ佐々木朗希は母親と一緒に「米国に行かせろ」の一点張り…繰り広げられる泥沼交渉劇