女性に多い大動脈弁狭窄症の治療法は選択肢がいくつもある
以前にもお話ししましたが、心臓疾患には女性に多く見られる病気があります。女性の病気といえば、特有の体の構造から、乳がん、子宮がん、卵巣がんなどが代表的です。そうした病気に対しては、婦人科や乳腺科といった女性を対象にした専門科があり、遺伝や生活習慣といった発症リスクを上げてしまう要因や診断治療に関する知識が一般にも共有されています。病気に関する情報が広く認知されているため、自分で注意して定期的に検査を受けている女性もたくさんいます。
ところが、女性に多い心臓疾患についてはそれほど周知されていないので、そこまで気にする人が少ないのが現状です。
女性に多い心臓疾患の中で、最も多く見られるのが「大動脈弁狭窄症」です。血液の逆流を防止する大動脈弁が硬くなって開きにくくなる病気で、血液の流れが悪くなり重症化すると突然死するケースもあります。
とりわけ高齢の女性に大動脈弁狭窄症が多く見られるのは、卵巣から分泌される女性ホルモンのエストロゲンの影響です。エストロゲンはさまざまな役割を担っていて、循環器や脂質代謝の機能を調節して心臓を保護する作用もそのひとつです。女性が50歳前後になって閉経するとエストロゲンが急激に減少し、血圧が不安定になったり動脈硬化を招いたりするなどして男性よりも強く弁の石灰化を促進させるのです。