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天野篤順天堂大学医学部心臓血管外科教授

1955年、埼玉県蓮田市生まれ。日本大学医学部卒業後、亀田総合病院(千葉県鴨川市)や新東京病院(千葉県松戸市)などで数多くの手術症例を重ね、02年に現職に就任。これまでに執刀した手術は6500例を超え、98%以上の成功率を収めている。12年2月、東京大学と順天堂大の合同チームで天皇陛下の冠動脈バイパス手術を執刀した。近著に「天職」(プレジデント社)、「100年を生きる 心臓との付き合い方」(講談社ビーシー)、「若さは心臓から築く 新型コロナ時代の100年人生の迎え方」(講談社ビーシー)がある。

感染性心内膜炎の増加に含まれる見直すべき「キーワード」

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 薬物乱用に関連した「感染性心内膜炎」の発症が増えている――。米国クリーブランドクリニック循環器内科の医師による研究報告には、現代人と現代社会が抱えている問題点がいくつも含まれています。

 感染性心内膜炎は心臓の内部の構造物に細菌が取りついて起こる感染症です。弁膜に巣くって弁を破壊し心臓弁膜症や心不全を引き起こしたり、形成された細菌の塊が脳の血管に飛んで脳梗塞の原因になるケースもあります。前回は、現代人の心臓の構造が脆弱になってきていて、細菌感染が起こりやすくなっていることについてお話ししました。

 体の構造だけでなく、感染性心内膜炎には「公衆衛生の低下」が大きく関係しています。上下水道の整備が不十分で、不衛生な飲食物を口にする機会が多いと、それだけ細菌感染のリスクがアップするからです。

 米国の報告では、患者の42%は所得四分位階級の最も低い階級に属していて、最も増加率が高かった地域は中西部でした。これは、米国では貧富の格差がさらに進んでいて、低所得者層が集まっているような地域の公衆衛生に問題があるという米国の社会状況を表しているといえます。そうした地域では、薬物乱用の問題も深刻です。報告した医師も「全国規模で深刻な公衆衛生問題への対策を展開し、地域でもリスクの高い患者に特化した対策を行っていくことが必要だ」と警鐘を鳴らしています。

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